「セネシャリエールの1年を振り返る」
はじめまして。
フランスのワイナリー、セネシャリエールに勤務しています古谷遼友(ふるやりょうすけ)です。
フランスのワイナリーからの現地の情報をということで、初回は「セネシャリエールの1年を振り返る」というテーマでお話させて頂きます。
ブログという形式は初めてなので、どう始めたらよいか悩んでしまいますが、肩肘張らずに気軽な感じでお伝えしたいと思います。
「セネシャリエールの1年を振り返る」というテーマですが、ワインの出来にかかわるヴィンテージの話が最も気になるところかと思いますので、まずは2024年の話をしたいと思います。
2024年はかなり難しい年でした。
ミュスカデの地域でまず懸念されるのが、春の遅霜です。
温暖化の影響で冬が暖かくなり、芽の出芽が早くなり、春先(4月初旬)に霜が降りて、若いデリケートな芽がやられてしまうというものです。
幸いなことに2024年はセネシャリエールでは霜害に遭うことなく、5月までは芽の生育も順調でした。
しかし、5月下旬ころから雨が多くなり、べと病が出始めました。
本来であれば7月は晴天が多く、乾いた月となるところが、今年は雨続きで、8月も同様に雨が降り続き、降雨量が8月までで800mm以上ありました。
これはセネシャリエールの周辺では一年分の降雨量に相当します。特にこの辺りは冬に雨が多いのですが、それが春から夏にかけて多く雨が降りました。
雨が降ったとしても、セネシャリエールから少し南の丘の向こう側で雨雲が止まってくれることが多いのですが、今年はセネシャリエールの周辺まで雨雲が来ました。
そのおかげで、6月の半ばにはべと病がすべての区画に蔓延し、毎日病気との追いかけっこのような状態でした。
私たちの病気への対処は、銅と硫黄の調合剤を少しと、ブドウの樹を健康に保つための、イラクサやノコギリソウなどからの抽出液剤を使用します。これらはあくまで病気に罹りにくくするための抗菌的な薬剤でブドウの葉や房をコーティングするだけなので、一定の雨が降れば、洗い流されてしまいます。そのため雨の度に散布しなおさなければなりません。
2023年度はこの散布作業が14回(ミュスカデ地域では平均的)でしたが、今年は25回行いました。この散布作業だけ見ても違いがわかるくらい2024年は畑の作業にとても気を遣いました。
このような厳しい状況のなかで収穫を迎え、結果的に収量は昨年比で約60%減となりました。
冷夏でもあり、理想的にはもう少し熟度を待ってから収穫をしたかったにですが、待っていても収量がどんどん減っていくだけなので、私たちのワインにとってはまだ早いとは思いつつも、頃合いを見つけ収穫に踏み切りました。
少ない収穫量とは裏腹に、収穫後の醸造は順調に進みました。まだまだ発酵が終わったばかりでもあり、ワイン自体は落ち着いていませんが、今年は涼しい年だったこともあり、例年よりも酸が残ったのと、アルコール度数が低く、飲み心地の良い仕上がりになると思います。
2022年のような、しっかりとボディを感じるような年とは対照的な年のキャラクターとなると思います。
おそらくすでに日本でも飲まれている2024年のヴィンテージはボジョレーヌーボーが一番最初だと思いますが、セネシャリエールもプリムールとなるクールドレザンの2024年を先日瓶詰めしました。2025年の年明けに日本に向けて出荷しますので、2024年ヴィンテージ第一弾のセネシャリエールのワインをぜひ楽しみにしていてください。
これからも定期的に現地情報を発信していきたいと思いますので、今後ともセネシャリエールを宜しくお願い致します。
古谷遼友
Domaine de La Senechaliere