「新キュベ、アルモリカ」

こんにちは。
セネシャリエールの古谷です。
第二回目となりますが、今回はセネシャリエールの新しいキュベ、アルモリカ(ARMORICA)についてお話したいと思います。

<ミュスカデという品種とそれに対するアプローチ>
セネシャリエールでは、繊細で品種個性の乏しいミュスカデの表現を最大限に引き出すため、長時間のプレスによって、他にはない、特徴的なキャラクターを備えたワインにすることを目指しています。
そこで、まずクールドレザンで新酒の飲み心地を追求したキュベを造り、次にトリマルトロードというキュベで、6ヶ月の澱との熟成を経ることで、ミュスカデのクラシックなスタイルをセネシャリエールなりのキャラクターで造り、そしてデジレというキュベで、古樹でなおかつより熟成期間を長く取ることでワインとしてのポテンシャルと複雑味を備えたキュベを造っています。
そして、アルモリカはそこにさらにテロワール別のキュベにすることで、より正確にミュスカデという品種の可能性を追求しました。
<なぜこのキュベを造るに至ったか>
今では想像できないのですが、ミュスカデのエリアには、遠い昔、アルモリカ山塊という、エベレスト級の山が存在しており、その山が何億年もかけて風化したことで、現在の土壌が形成されました。
この土壌は、道を挟めば隣には異なる土壌が広がっているというような具合で、複雑に入り組んだモザイク状の土壌になっています。6つの異なるシスト土壌(ミカシスト、アンフィボリット、レプティニット、グィネス、セルパンティニット、オルトグィネス)と、花崗岩土壌、ガブロという火山性の岩からなる土壌が存在します。
また、ミュスカデのエリアは標高の高い山や丘が存在せず(60〜70m)、区画の傾斜の影響をブルゴーニュほど受けないので、土壌別のキュベを造れば、本当の意味でのピュアな土壌の特性をワインに反映できるのではと考え、このアルモリカというキュベを造るに至りました。
2020年に試験的にデジレの醸造を土壌別にタンクを分け、各タンクが各々個性に富んでいたので、土壌別の3種類のデジレをリリースしました。2021年からは本格的にアルモリカとして仕込むようになりました。
現在、アルモリカは、ワインの表現力が最大限引き出てくるまで、グラスファイバー由来のVaslinという小型のタンクでシュールリーで24ヶ月の熟成をしています。
<なぜこのネーミングか>
ネーミングのついては、上述の通り、アルモリカ山塊が今の土壌を形成したことから敬意を込めて「アルモリカ」というキュベの名前にしました。
<どういったものと合わせるべきか>
クールドレザンやトリマルトロードがアペロなどで楽しめる、カジュアルなワインであるのに対して、アルモリカは前菜だけではなく、魚や子牛、鶏肉、豚肉などのメインの料理にも合わせて頂きたいキュベです。
キャラクター的には他のキュベにはない、しっかりとした凝縮感と土壌由来のミネラル感が特徴です。白ワインで、特にミュスカデでメイン料理と合わせるなんてと考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが、騙されたと思って一度試されてみてください!
値段的にはデイリーなワインではなく、晴れの日や、なかなか背伸びをしなければならない価格帯のワインではありますが、今までのミュスカデには体験できない唯一の味わいを表現できたと自負しています。ぜひ一度試してみてください!
古谷遼友
Domaine de La Senechaliere
